脱毛症には男性特有のもの、女性特有のもの、また男女ともに起こりうる脱毛症があります。ここでは、男性・女性に発症する一般的な脱毛症の種類とその特徴・原因について解説します。
AGA(男性型脱毛症)
AGA(男性型脱毛症)は男性の脱毛症の中で最も発症者の多い有名な脱毛症です。雑誌やテレビのCMなどで耳にしたことがある方も多いと思います。
薄毛・抜け毛に悩む男性の9割以上がこのAGAが原因と言われています。
特に、
- 10代・20代の若いときに発症するAGAを「若年性脱毛症」
- 30から40代以降で発症する場合を「壮年性脱毛症」
と呼んで、年代別で区別する場合もあります。
男性ホルモンが起因している脱毛症で、男性ホルモンの一種であるテストステロンが毛乳頭に存在する5αリダクターゼという酵素によりDHT(ジヒドロテストステロン)というより強力な男性ホルモンに変換されることがAGAの原因となります。
AGAは遺伝性もありますが、生活環境など後天的な要素でも発症又は進行を早めると言われています。
AGAを発症すると、生活環境や食生活などの改善だけでは回復・改善が難しく、別途、しっかりとしたAGA対策が必要となります。
尚、AGAは女性にも見られます。女性にも男性ホルモンが存在し、普段は女性ホルモンの影にかくれて目立ちませんが、加齢や更年期などで女性ホルモンの分泌量が少なくなると男性ホルモンが優位に立ち、男性のAGAと同じようなメカニズムで抜け毛・薄毛に発展していくと考えられています。
女性の場合は、ホルモンバランスの乱れという括りで分類されることもありますが、びまん性脱毛症、FAGA(女性男性型脱毛症)として扱われる場合もあります。
参考:男性の薄毛の原因と対策
びまん性脱毛症(FAGA)
びまん性脱毛症は、女性の薄毛の原因として最も多い脱毛症といわれています。AGAの女性版であるFAGA(女性男性型脱毛症)と同じ脱毛症として分類されることもあります。
加齢や閉経、ストレスや過度ダイエットなどでホルモンバランスを崩して体内で男性ホルモンが女性ホルモンより優位になることで発症すると考えられています。
男性のAGAが一般的に生え際や頭頂部から薄毛へと発展していくのに対し、女性の場合は、髪の毛全体のハリとコシが無くなり、細く弱々しくなりながら次第に薄くなり地肌が目立つようになるのが特徴ですが、女性ホルモンが著しく減少すると男性の薄毛のように前頭部や頭頂部が薄くなってしまうこともあると言われています。
参考:女性の薄毛の原因と対策
円形脱毛症
円形脱毛症は、10円~500円玉程度の大きさの脱毛が突然起こってしまう脱毛症です。酷くなると脱毛部分が広範囲に広がります。
円形脱毛症の原因については様々な説が提唱されていますが、近年では自己免疫反応の異常によって引き起こされる疾患のひとつとする説が有力で、老若男女問わず、どんな人でもかかる可能性のある脱毛症です。遺伝性もあると考えられています。
自己免疫反応の異常とは、病原菌やウィルスなど外部からの侵入物を攻撃する免疫機能に異常が生じ毛根など自分の体の一部分を敵とみなして攻撃を繰り返してしまう病気です。
原因についても諸説ありますが、強い精神的ストレスやアレルギー、ホルモンバランスの乱れなどが原因と考えられています。
程度の軽い精神的ストレスなどの場合はストレスがなくなったりすることで自然治癒することが殆どです。
参考:円形脱毛症の原因と対策
産後脱毛症
産後脱毛症とは、読んで字のごとく出産後に発症する女性特有の脱毛症です。分娩後脱毛症とも言われ、出産を経験した女性のおよそ7割が経験していると言われています。
産後脱毛症の原因は女性ホルモンの変化と言われています。
女性ホルモンには、女性らしく成長させるエストロゲン(卵胞ホルモン)と妊娠を継続するためのプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、約2週間ごとに交互に優位な働きをしていますが妊娠中はこれらの女性ホルモンが優位に働く状態になります。
産後はこのホルモンバランスが一変、女性ホルモンは急激に減少してしまいます。この減少により、妊娠中に抜けるはずだった髪が一気に抜け落ち、薄毛になってしまうのです。
引用元:出産・産後に起こる抜け毛の原因と対策
妊娠中は女性ホルモンが優位に働き、本来抜けるべき髪の毛が抜けずに成長を続けますが、出産して妊娠が終わると女性ホルモンの分泌が急激に減少し、成長していた髪の毛が一気に抜け落ちてしまいます。
これが産後脱毛症のメカニズムです。
産後脱毛症はいつまでも続くわけではなく、一般的には、ホルモンバランスの正常化とともに出産後半年から1年程で元に戻る場合が多いと言われていますが、育児ストレスや睡眠不足、無理なダイエットなどで長引くケースもあります。
長引く場合は、これらのストレスを解消するのが先決ですが、シャンプーやサプリメントを活用するのもおすすめです。産後の抜け毛対策に効果的な栄養としては、葉酸や亜鉛、大豆イソフラボンなどがあります。
休止期脱毛症
髪の毛は、成長期・退行期・休止期からなるヘアサイクルを経て抜け落ち、生え変わります。
健康なヘアサイクルでは、2年から6年の成長期を経て、退行期、休止期へとシフトし、やがて抜け落ちます。
休止期脱毛症とは、成長期にある毛髪が急激に休止期に移行して抜け落ちる脱毛症です。
通常は、AGAと同じような生え際の後退や軟毛化はありません。
女性に多く見られる脱毛症で、びまん性脱毛症の一種に分類されることもあります。分娩後脱毛症も休止期脱毛症のひとつに分類されることがあります。
原因は、ホルモンバランスの乱れや過度のストレスをはじめとした精神的な影響や栄養不足、睡眠不足、また、甲状腺ホルモンは毛周期に影響を与えるので、甲状腺の疾患を持っていると、休止期の毛が多くなり一つの要因になると考えられています。
特に毛髪の休止期が6ヶ月以上の長期に渡る場合を慢性休止期脱毛症(CTE)と言います。慢性休止期脱毛症(CTE)は改善が困難と言われています。
男性でも発症しますので、AGA治療が効果を感じられないといった方は慢性休止期脱毛症を疑った方がいいかもしれません。
脂漏性脱毛症
脂漏(しろう)性脱毛症とは、ホルモンバランスの異常や間違ったシャンプーの使い方などで頭皮から分泌される皮脂が過剰となり、皮脂が毛穴を塞いで常在菌が異常繁殖し、炎症(脂漏性皮膚炎)を起こして脱毛する脱毛症のことです。
改善を試みて脱脂力の強いシャンプーを使用すると、かえって皮脂の不足を補おうと皮脂の過剰分泌を招き、逆効果となる場合がありますので注意が必要です。
適度な脱脂力で刺激が少なく頭皮に優しいアミノ酸系の洗浄成分(界面活性剤)を使用した育毛シャンプーなどで頭皮のケアをすることが大事です。
また、ビタミンB群や食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取し、脂肪分の多い食品を避けることも改善には有効とされています。
脂漏性脱毛症を引き起こす脂漏性皮膚炎は、単なるフケ症として放置している人もいますが、ひどくなると頭全体がフケだまりになる場合があり、自然治癒は難しいので一度皮膚科を受診することをおすすめします。
批糠性脱毛症
批糠(ひこう)性脱毛症は、乾燥したフケが大量に発生することで発症する脱毛症です。
何らかの理由で乾燥したフケが大量に発生し、フケが毛穴を塞ぐことで、皮膚常在菌が異常繁殖し、痒みや炎症を起こして脱毛を起こしたり髪の毛が成長できなくなります。
原因としては食事の栄養の偏り、加齢やストレスなどによるホルモンバランスの乱れ、運動不足などが原因と考えられています。
フケを取り去ろうとシャンプー等で過度に脱脂すると体が不足した皮脂を過剰分泌し、かえって悪化させてしまいかねません。
脂漏性脱毛症と同様に、アミノ酸系の洗浄成分などを配合した刺激が少なく頭皮に優しいシャンプーを使用するなど頭皮ケアを見直すことが大事です。
脂漏性脱毛症と批糠性脱毛症は、シャンプーを見直すことで改善方向へ導くことが可能と考えられています。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症とは、一度引っ張って抜けるような強い力でなくても、少しずつ毛根に負担をかけるような力で長時間継続的に引っ張り続けることで毛根が弱ってしまい、やがて抜け落ちてしまう脱毛症です。
特に女性に多く見られる症状で、ポニーテールやお団子ヘア、また最近流行しているエクステなどで長い間毛根にダメージを与え続けることなどがこの脱毛症の引き金となる場合があります。
通常は、引っ張ることを止めることにより徐々に改善していきます。
初期脱毛
脱毛症という訳ではありませんが、育毛剤を使用し始めた場合、育毛剤を変更した場合などに一時的に脱毛が起こる場合がります。これを初期脱毛と呼んでいます。
初期脱毛は、ヘアサイクルが大きく関係しています。育毛剤などを新しく使用しはじめた場合や変更した場合などに、ヘアサイクルを休止期から成長期へと促す段階で、成長の終わった髪の毛が押し出されることで起こると考えられています。
ミノキシジルを使用しはじめた場合に多く報告されています。外用薬より内服薬で発症するケースが多いと言われています。一般的には初期脱毛が起こるということは薬が効き始めた証拠で決して悲観することではありません。
個人差がありますが、通常は、1ヶ月ほどで症状が治まり、新しい毛が生えてきます。