ここでは、髪の毛の一生であるヘアサイクルについて解説します。
ヘアサイクル(毛周期)とは?
髪の毛は、生えたら一生伸び続ける訳ではありません。髪の毛にも人と同じように寿命があり、生えてから一定期間が経過すると必ず抜け落ちます。通常はこれを何度も繰り返しているため、見た目はずっと生え続けているように見えるのです。
髪の毛は、その段階に応じて、
①成長期 → ②退行期 → ③休止期
という一連の流れを経て脱毛します。
この一連の流れをヘアサイクル(毛周期)といいます。 毛母細胞が細胞の分裂活動を停止して一つのヘアサイクルが終了すると新たな毛母細胞が産出され、再び細胞の分裂活動を開始し、ヘアサイクルの成長期へとシフトします。
この流れは男性と女性で変わりがありませんが、成長期の期間は一般的に女性の方が1年ほど長いと言われています。
健康な髪の毛であれは、「成長期」→「退行期」→「休止期」を以下のヘアサイクル(流れ)で繰り返しています。
尚、ヘアサイクルは髪の毛1本ごとに異なりますので、通常は一度に大量の抜け毛が発生することはありません。
成長期 (およそ2~6年) |
成長期は髪が抜けずに成長していく時期です。大きく3段階に分かれます。 (成長期1) (成長期2) (成長期3) AGA(男性型脱毛症)の場合やFAGA(女性男性型脱毛症)、またホルモンバランスに異常をきたした場合などは、この成長期の期間が短くなり、すぐに次のステップである退行期へと移ってしまいます。 ※髪の毛のおよそ80%~90%がこの成長期の段階にあるといわれています。 |
退行期(2~3週間) |
毛母細胞の細胞分裂が弱まり、髪の毛が成長しなくなる段階です。 髪の毛は毛乳頭から離れて完全に成長をやめる休止期にシフトするまで約2週間~3週間かかります。 ※髪の毛のおよそ1%ほどがこの退行期の段階にあるといわれています。 |
休止期(3~5ヶ月) |
毛母細胞での細胞分裂が停止し、休止期に入り脱毛が始まります。 成長が止まった後は頭皮の奥から頭皮の表面に徐々に上がっていき抜け落ちる準備をします。シャンプーなどで抜ける髪の毛はこの時期のものが殆どです。 休止期は細胞分裂が完全にストップし、新たな髪が生まれることも成長することもありません。個体差がありますが、3ヶ月から5ヶ月間この状態が続き、その後、新しい髪の毛を製造する準備が始まり、成長期へと続きます。 ※髪の毛のおよそ10%~20%がこの休止期の段階にあるといわれています。 |
毛母細胞の分裂終了とともに1つのヘアサイクルが終了すると、新しく毛母細胞が活動をはじめ、再び新しいヘアサイクルが始まります。
一つの細胞の分裂回数には限りがあると言われるように毛母細胞にも限りがあり、その回数はおよそ50回ほどと言われています。限りのある細胞分裂が終了すると髪の毛の製造はできなくなってしまいます。
従って、新しいヘアサイクルでは、停止をしていた毛母細胞がいきなり活動を再開するのではなく、毛根部分の少し上(頭皮の表面近く)にあるバルジ領域という箇所から毛母細胞の元となる幹細胞が提供され、それが毛母細胞に分化して再び細胞分裂を始めて髪を製造していくとされています。
つまり、毛母細胞が一定の回数分裂して活動を停止すると、その元になる細胞(幹細胞)から新しく毛母細胞がコピーされて、再び活動を開始するという訳です。
但し、このように、脱毛したらまた新しく生えてくるといったヘアサイクルの繰り返し回数は永久ではなく、個人差はありますが、細胞の老化などにより、一生のうちに15回ほどが限界と言われています。
AGAなどを発症していない健康な髪の場合は、ヘアサイクルは1周期が2年から6年の期間がありますので仮に1周期5年が15回繰り返された場合は75年間は毛髪生産の活動をすることになります。
しかし、AGAなどを発症してヘアサイクルが短くなると繰り返し回数を早く消費することになり、必然的に一生のうちの毛髪生産の活動期間も短くなります。
繰り返しの回数が限界に達すると毛髪生産の活動は停止し、髪の毛が生えてこなくなります。AGA(薄毛)対策は早目の対策が有効(必要)と言われるのはこのためです。
早めの段階で対策を打ち、1回のヘアサイクルの期間を伸ばすことで、残りの繰り返し回数の消費を遅らせることができるという訳です。
ヘアサイクルの乱れが薄毛・抜け毛の原因
私たちの髪の毛は個人差はあるものの平均約10万本あるといわれており、正常な人でも1日平均50本から100本の髪の毛が抜け落ちています。
一方で毎日50本から100本くらいの髪の毛が新たに生えてきますので髪の毛の成長サイクルが正常であれば極端に髪の毛が減ったり薄くなったりすることはありません。
しかし、例えば、男性型脱毛症(AGA)や女性男性型脱毛症(FAGA)などを発症すると、このヘアサイクル(毛周期)は狂ってしまいます。
つまり、AGAなどを発症すると、まだまだ成長すべき成長期段階にある髪の毛が脱毛指令によって退行期、休止期へとシフトしてしまい、髪が太く長く成長する前に抜け落ちてしまいます。その結果、生えてくる髪の毛よりも抜け落ちてしまう髪の毛の本数が多くなり、髪の毛は徐々に減少してきます。
ヘアサイクルが乱れる原因はAGAだけでなく、様々な要因が考えられます。主なものでは、過度のストレスやバランスの悪い食事、不規則な生活などです。
過度のストレスを受けると自律神経が乱れ、血流も悪化。髪の毛の成長を維持する栄養が滞り、通常より早く退行期へとシフトしてしまいます。ダイエットなどでバランスの悪い食事をした場合も同様です。
シャンプーや育毛剤なども自分に合わないものを使用すると頭皮の刺激物となり、同様にヘアサイクルを乱す原因となってしまう場合があります。
最近、髪の毛にコシが無くなった、細く弱々しくなってきた、シャンプー時の抜け毛が増えてきた、地肌が薄らと見えてきた、といった場合、また、抜け毛が細かったり、毛根部が細かったりする場合は、十分な成長期を経ずに抜け落ちていると考えられるため、正常なヘアサイクルを経ていない可能性があります。
この手の髪が多くなってきた場合は、ヘアサイクルが乱れてきたサインですので生活習慣や食習慣、シャンプーなどを見直すことに加え、AGAが疑わしい場合は、早めにその原因を取り除くことでヘアサイクルを正常化し、毛乳頭や毛母細胞などにしっかりと栄養を送り届けることで抜け毛・薄毛の改善が期待できます。
ヘアサイクルが乱れる主な原因
- 加齢
- AGA(男性型脱毛症)
- FAGA(女性の男性型脱毛症)
- 生活習慣の乱れ
- バランスの悪い食生活
- 過度のストレス
- 間違った頭皮ケア・ヘアケア
ヘアサイクルを正常に戻すためにできること
乱れたヘアサイクルを正常に戻すには、ヘアサイクルが乱れている原因を特定し、それにあった対策を打つことが重要です。
単に生活習慣や食習慣の乱れ、過度のストレスによる場合は、それらの改善に加えてシャンプーなどを見直すことで比較的早期に改善が見込めます。
自分に合っていないシャンプーや育毛剤などを使っているなど間違ったヘアケア対策を行っている場合も同様です。
但し、AGAやFAGAを発症している場合は、これらの対策だけでは不十分です。AGAはいわば病的な症状ですので別途、しっかりしたAGA対策が必要です。
AGA(FAGA)は、男性ホルモンであるテストステロンが5αリダクターゼという酵素でDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されることが原因、またこの物質が多く産出されることが原因であることがわかっていますのでこれらの成分を抑制すべく対策、具体的には5αリダクターゼやDHTといった物質の働きを抑える育毛剤や育毛サプリメントの活用が有効になります。
尚、AGAを発症して薄毛が進行している場合もそうですが、さほど進行していない場合でも、将来の薄毛リスクに対する予防的な意味や早めに対策を打つという意味からも常日頃から使用するシャンプーを頭皮環境をケアするシャンプーに変えることはおすすめです。
また、生活習慣や食習慣の乱れによる場合も、それらの改善に加えてシャンプーなどを見直すことで比較的早期に改善が見込めます。
これらの対策を講ずることで、ヘアサイクルは正常化に向かい、やせ細ってきた髪の毛にハリ・コシを与え、従来の太さまで改善することも期待できます。
ヘアサイクルの正常化には時間が必要
いずれにしてもこれらの対策は即効性がある訳ではありません。
例えばヘアサイクルが乱れて髪の毛が抜け落ちた後、休止期の状態にある髪の毛が細胞分裂を開始し、頭皮の表面に現れるまでには、個人差・個体差はあるものの数ヶ月(3ヶ月~)はかかることになります。
同様に、成長期にある髪の毛が休止期にシフトしたからといってすぐに抜け落ちる訳でもありません。この場合も個人差・個体差があるものの抜け落ちるまでには数ヶ月という時間がかかることになります。
例えば育毛剤を使用しはじめて1週間程度で抜け毛が増えたという初期脱毛があった場合で、1ヶ月経っても髪の毛が生えてこないというのは、髪の毛が生えてくるサインかもしれませんし、頭皮内で細胞分裂を盛んに行っている時期かもしれません。
よく育毛剤などで「効果が確認できるようになるためには最低3ヶ月から半年は続けて下さい」と謳ってあるのはこのようなヘアサイクルの仕組みがあるためです。
このため、ヘアサイクルが正常化されたかどうかを判断するためには、育毛剤や育毛サプリメントなどは最低3ヶ月は継続する必要があると言われています。
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