ここでは、毛根鞘とは何か、毛根鞘にはどのような働きがあるかについて解説します。
毛根鞘とは
髪の毛を無理に抜いた時に根元の部分に白て脂っぽい半透明のぷるぷるしたゼリー状のようなものが確認できる場合があります。
これが毛根鞘と言われるものです。
皮脂が混じっている場合もありますが、毛根鞘は皮脂とは別物です。
勿論、自然脱毛の時にこの毛根鞘が付着していることもあります。
毛根鞘は毛球部を包んでいる毛包組織の一部です。
内側を覆って毛髪に接している内毛根鞘と外側を覆っている外毛根鞘から構成されます。
近年、この毛根鞘の働きが徐々に解明されてきています。
毛根鞘の働き
毛根鞘には以下のような働きがあることがわかってきています。
髪の毛を頭皮に固定する働き
毛根鞘も髪の毛同様、毛球部付近で細胞分裂によって作られ、毛球部で育っている毛髪の角化が完全に終わるまで保護し、毛髪のキューティクルをしっかり掴み、繋ぎとめながら表皮まで送り届ける働きを担っています。
つまり、毛根鞘には、毛髪をしっかり掴む、言わば鞘(さや)のような働きをして髪の毛を頭皮に固定する接着剤のような働きがあります。
毛根鞘も毛髪の成長とともに上部に押し上げられていき、毛髪を表皮まで送り届けた後はフケとなって頭皮から排出されます。
バルジ領域で髪の毛の元を管理
毛根鞘のうち外毛根鞘には、バルジ領域というものが存在します。
バルジ領域は、近年発見された毛根部分に存在する領域で、この領域がヘアサイクルと密接な係りがあることがわかってきました。
バルジ領域には、
- 毛包幹細胞と
- 色素幹細胞
の2種類の幹細胞が存在します。
そして、幹細胞とは、
- 自分と同じ能力を持った幹細胞をコピーできる能力(自己増殖能)と
- 他の様々な細胞になることができる能力(多分化能)をもった細胞
で、再生医療でも注目されている細胞です。
つまり、毛包幹細胞は、髪の毛を製造する毛母細胞を作り出す細胞で、また、色素幹細胞は、髪の着色に重要な働きをする細胞を作り出す細胞であるとされています。
尚、毛根鞘は、発毛・育毛・髪の着色に重要な役割を担っているだけでなく、髪の毛の太さにも密接な関係があることがわかってきています。
外毛根鞘には、CD34タンパク質を含んだ細胞(CD34陽性細胞)が存在するとされていますが、近年、このCD34陽性細胞がいずれ髪の毛となる毛母細胞のもととなる細胞であることが明らかになってきています。
さらに、日本メナード化粧品株式会社の研究では、太い髪と細い髪について分析したところ、細い髪ほど外毛根鞘に存在するCD34陽性細胞が少ないことが観察されています。
太い髪と細い髪について、外毛根鞘に存在するCD34 陽性細胞を免疫染色したところ、細い髪ではCD34 陽性細胞が少ないことが観察されました。
引用元:加齢により髪が細くなる原因を解明
このことから、髪が太い細いの原因は、この毛母細胞のもととなるCD34陽性細胞の量と関係していることにあるという考えもあるようです。
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このように毛根鞘は、毛根部分を頭皮に繋ぎとめる役割のほか、髪の太さや発毛・育毛に極めて重要な組織を守っている組織でもあるのです。
毛根鞘が抜けると髪が生えてこない?
毛根鞘が抜けたら、もう二度と髪は生えてこないという話を耳にしたことがある方もしるかもしれませんが、これも都市伝説ですので気にする必要はありません。
一般的には毛根鞘が髪と一緒に抜けても毛根鞘はまた作られますので問題ありません。
しかし、髪の毛を無理に引き抜いたりすると毛包を傷つけ、その後の発毛に悪影響を及ぼす可能性がありますのでむやみに抜いたりするのはよくありません。
外毛根鞘を活性化して育毛
このように、毛根鞘(特に外毛根鞘)は髪の毛の成長に欠かせない物質であることから、この外毛根鞘を活性化することは、髪の毛を太くしたり、発毛・育毛促進に有効であると考えられています。
外毛根鞘を活性化する働きがあることで話題となっている成分があります。
スイスの化粧品原料メーカー「INDUCHEM社」が開発した「リデンシル」や、外毛根鞘に存在するバルジ領域を活性化する成分「オクタペプチド-2」という成長因子がそうです。
リデンシルの有効成分の一つであるDHQGは、毛乳頭細胞よりも浅い部分に位置するバルジ領域の幹細胞を活性させる効果があります。 参考:リデンシルの育毛効果 |
オクタペプチド-2は、成長因子の一種で、毛根部分にあるバルジ領域を活性化し、毛包幹細胞を生成するように働きかける物質です。 参考:オクタペプチド-2で育毛促進 |
近年はこれらの成分を廃坑するシャンプーや育毛剤が増えてきています。