シャンプーで頭皮の脂汚れを落とす仕組み

シャンプーで頭皮の脂汚れを落とす仕組み

シャンプーには水だけではなかなか落とせない頭皮の脂汚れを落とす働きがあります。

ここでは、シャンプーの最も大きな役割の一つである頭皮の皮脂汚れを落すメカニズムについて解説します。

シャンプーは頭皮の脂汚れを落す洗剤

水やお湯だけではなくシャンプーや石鹸というものを利用して毛髪や頭皮を洗う理由は、頭髪や頭皮についている埃や汚れ、汗、フケだけではなく、余分な皮脂汚れを落とす必要があるためです。

埃や汚れ、汗やフケなどは水やお湯だけで殆ど落とすことができますが、皮脂は水やお湯だけで簡単に落とすことは困難です。

それは、水と脂(油)の相性が悪く、お互いが反発しあって思うように脂を洗い流すことができないためです。ご存じのように油と水は混ざり合いません。

そこでシャンプーには、食器を洗う洗剤や衣服を洗う洗濯用洗剤と同じように界面活性剤という洗浄成分が配合されており、これが皮脂汚れを洗い流す役割を担っています。

シャンプーで脂汚れを落とす仕組み

それでは、シャンプーでは実際どうやって頭皮の汚れを落しているのでしょうか、そのメカニズムについて簡単に解説します。

一般的なシャンプーは
・水が6割
・洗浄成分(界面活性剤)が3割
・残りの1割ほどがその他の成分
で構成されています。

この配合率からも、シャンプーは、その殆どが水と洗浄成分(界面活性剤)でできており、洗浄成分(界面活性剤)はシャンプーの要と言うことができます。

そして、この洗浄成分(界面活性剤)が脂汚れを落す役割を担ってます。

乳化作用で脂汚れを除去

界面活性剤は、物質の境の面(界面)に作用して性質を変化させる物質の総称です。

界面活性剤には、乳化作用、浸透作用、分散作用などがありますが、脂汚れはこのうちの主に乳化作用を利用して除去されます。

例えば、水と油をひとつの入れ物に入れると、2つは反発しあって2つの層に分かれます。しかし、この中に界面活性剤を入れてかき混ぜると、水と油は混ざりあいます。

これは、界面活性剤が油汚れの表面に吸着して、油汚れと水との間の表面張力を小さくし、汚れを皮膚からはがして水の中に浮き上がらせようとするためです。

この作用が乳化作用というものです。乳化は下記のメカニズムで行われます。

洗浄成分(界面活性剤)は、
・油になじむ「親油基(シンユキ)」と
・水になじむ「親水基(シンスイキ)」
の二つの分子を持っています。

親油基と親水基の構造

親油基は、油に馴染むため、頭皮の脂を見つけて結合し、一方、親水基は水と馴染むため水と結合します。つまり、洗浄成分は、脂と水を掴んで繋げる役割を果たします。

こうして水と油は混ざり合うことを乳化と言います。

親油基が脂汚れに結合し、親水基が水に結合すると、頭皮に脂汚れが付着する力よりも水になじむ「親水基」の水に引っ張られる力の方が強くなります。

脂が水の力で徐々に剥がされていくと、親油基はさらに頭皮と脂汚れの間に入り込み、頭皮から油汚れを引き離すことができるようになります。

このように界面活性剤(洗浄剤)は、泡となって「親油基」と「親水基」で水と脂の両方を掴んでくっ付け合わせ、シャワーなどの水(お湯)の勢いで洗い流すことができるのです。

洗濯用洗剤や食器用洗剤などもこのようなメカニズムで脂(油)汚れを落しています。

界面活性剤による洗浄力の違い

実は界面活性剤の種類でこの皮脂汚れを除去する力は異なります。

界面活性剤には、成分の違いで、
・高級アルコール系
・アミノ酸系
・石鹸系
といった種類があります。

高級アルコール系シャンプーなどに使われている界面活性剤の親油基の部分にはヤシ油など植物系の油脂や石油が使われており、親水基の部分には硫酸が使われていたりします。

原料が安いため、シャンプーの販売価格は安くなりますが、脱脂力(脂を取り除く力)が強く皮脂を取りすぎる傾向にあり、頭皮への刺激も強いのが特徴です。

スーパーやドラッグストアなどで大量に販売されている安価なシャンプーの多くはこの高級アルコール系シャンプーです。高級と付いていますがいわゆる高級とは違います。

参考:市販のシャンプーの殆どは高級アルコール系シャンプー

一方、アミノ酸系シャンプーなどに使われている界面活性剤の親油基の部分には、ヤシ油などの植物系の油脂が使われており、親水基の部分には、グルタミン酸などのアミノ酸が使われています。

アミノ酸系の洗浄成分は、原料が高いためシャンプーの販売価格は高めですが適度な洗浄力で頭皮に優しいため、いわゆる育毛シャンプー・スカルプシャンプーといったものはこのアミノ酸系シャンプーが主流になっています。

程よい洗浄力が頭皮環境を整え育毛を促進

適度な洗浄力で頭皮に優しい洗浄成分が育毛シャンプー、スカルプシャンプーといったものに使われている理由は、これらのシャンプーが皮脂を取りすぎることなく頭皮環境を守るためです。

皮脂は男性ホルモンと関係しており、一般的に男性ホルモンの多い男性に多いと言われていますが、女性でも女性ホルモンのバランスを崩したり女性ホルモンの分泌量が減少して男性ホルモンが優位になると皮脂の分泌が増えます。

皮脂は頭皮のベタつきや頭皮臭の原因にもなるため、どちらかというと悪者扱いされることが多いのですが、皮脂には頭皮環境を守る重要な役割があります。

皮脂を取り過ぎず頭皮環境を守る

皮脂は、汗と混ざって皮膚の表面を覆う皮脂膜を作ります。

皮脂膜は、セラミド(細胞間脂質)や天然保湿因子(NMF)とともに頭皮のバリア機能を果たし、細菌やウィルス、紫外線などの外部の刺激から皮膚や毛髪を保護したり、頭皮内の水分の蒸発を防いだり(保湿)する働きがあります。

皮脂膜の働き

市販の安価なシャンプーなどに配合されている高級アルコール系洗浄成分(硫酸系)やスルホン酸系の洗浄成分と呼ばれる界面活性剤は、脂との吸着力(洗浄力)が強すぎるといった傾向があるため、頭皮環境を良好に保つ皮脂や保湿因子(NMFとセラミド)を必要以上に流出させる恐れがあります。

また、高級アルコール系洗浄成分にはタンパク質変性作用と言われるタンパク質を破壊する作用もあるため、特にすすぎ残ったりすると頭皮細胞のタンパク質を少しづつ壊していく可能性があり、頭皮環境の悪化の原因になる場合があります。

この影響で慢性的な肌荒れやニキビ、また、抜け毛や薄毛の原因になる場合があると考えられています。

一方、アミノ酸系洗浄成分(界面活性剤)は、洗浄力が控えめで保湿因子との相性もよく、程よく皮脂や保湿因子を残しながら優しく洗い上げることができます。

このような観点から育毛シャンプー、スカルプケアシャンプーといったものは、男性用・女性用を問わず、殆どが程よい洗浄力のあるアミノ酸系洗浄成分を使用したシャンプーが主流となっているのです。

まとめ

このように、シャンプーは配合する界面活性剤の親油基と親水基による水と油を混ざり合わせる乳化作用の力で頭皮の脂汚れを落とすことができます。

しかし、皮脂にも頭皮環境を外部の刺激から守るという重要な役割があるため、その落とし過ぎには注意しなければなりません。

頭皮環境を考える場合、抜け毛・薄毛対策、育毛を考える場合は、皮脂を落とし過ぎない程よい洗浄力を持つシャンプー選びが重要で、その点において洗浄成分には注意が必要です。

当サイトの育毛シャンプーのランキングにおいても、皮脂を取りすぎる傾向のある洗浄成分を使用しているシャンプーの評価を下げ、程よい洗浄力のあるアミノ酸系の洗浄成分を配合するシャンプーが上位を占めています。